「ハチドリのひとしずく食堂」のおばんざいの話

2022.4.2 J1第6節 川崎フロンターレvsセレッソ大阪 試合レビュー

J新記録となるホーム26戦無敗が掛かった川崎フロンターレ。
セレッソは見事に4-1で川崎を破り、その記録を阻止しました。

今季チャレンジしている前から仕掛ける守備で川崎の動きを封じ、決定機を丁寧に決めて4得点。
順位も5位に浮上と今後の勢いにつながる会心の勝利になりました。

前からのプレスで川崎のリズムを奪う

ここまでリーグ戦5勝1分1敗で首位の川崎ですが、昨年までの圧倒的な強さというのは落ちてきている印象です。

主力選手の移籍、過密日程、負傷者、他チームからの研究など要因は色々。
チャンピオンチームだからこその悩みに直面していると同時に、それでも首位をキープしているところは王者の貫禄があるなと思います。

ここまで他チームが川崎に対してやっていた対策がプレスで自由を奪うこと。
3/2の川崎と浦和の試合なんかも、結果としては川崎が勝利しているけれども浦和が素早いプレスで川崎のリズムを奪っていました。

セレッソも小菊監督が「川崎相手にゴールを守る守備をしてしまうとやられてしまう。今まで私たちが積み上げてきたサッカーで、勇敢に、アグレッシブに、ボールを奪いにいく。」と試合後にコメントしていたように、前からの守備で川崎の自由を奪うサッカーをします。

試合開始早々に左サイドマルシーニョが陸をはがし、ドリブルでヨニッチをかわしてシュートまで持って行くシーンにひやりとしますが、そこからは少しずつセレッソが準備してきたであろう守備の形がはまっていきます。

マルシーニョに対しては陸だけじゃなく、ヨニッチが高めの位置取りをすることでもし陸が抜かれてもすぐにヨニッチがカバーに行けるようにする。
奥埜はチャナティップを見つつ、陸とヨニッチの間のスペースを使われないように警戒。

セレッソは442なのでアンカーの橘田が浮きがちになるけれども、そこは加藤がCBを見ながら橘田にもプレスに行くという仕事でカバー。

そうやって人を捕まえる守備をしっかりと行った結果、加藤のプレスバックから先制点が生まれます。

加藤が奪ったボールを中原が拾って加藤に。
加藤は走り出した山田に送ると、フリーの乾に出すかと思いきや思い切ってシュート。
これはポストに当たってしまったけど乾がしっかり詰めて先制点を奪いました。

Q:1点目につながったシーンで、「前なら打っていないところを打てた」と話していたが、積極的にシュートを打つようになった、意識が変化するきっかけは何かあった?
「(前々節の)清水戦で、自分が打てたのにヒールで落として、カウンターを受けてしまい…。それはダメだなと思ったし、スタッフの方からも『シュートを打て』と言われました。それも意識の変化につながっていますし、意識を変えたところで得点が生まれていることも嬉しいです」

https://www.cerezo.jp/matches/2022-04-02/

ここ数試合、数字という結果を出し続けている山田。

身体能力やスキルっていうのは簡単には伸びないけれども、意識やメンタルというものは気付きを得たその瞬間から変えられるものです。
一つの出来事からしっかりと気付きを得て、それを自分の進化に繋げることが出来ていることこそが今の山田の凄さだと思います。

先制点後の川崎の攻撃、そしてサイドからのカウンターで追加点

セレッソが川崎戦で先制点を取ることが実は多くて、1点目を取ったこと自体にはそこまで驚きはありませんでした。
ただ過去の試合はそこから逆転されているわけで、それをみんな知っているからこそここから緊張感のある試合に変わっていきます。

先制点後は川崎がボールを握るシーンが増え、特に右サイドにいる家長や右インサイドハーフ脇坂、そして右サイドバック山根が上がってきて押し込んできます。
この3人はボールを握れるし捕まえづらい。

セレッソの守備陣としては一瞬でも気を抜くとPA内まで運ばれるし、結果としてはこの時間帯をしのいで2点目を生み出すことになりましたけど、前半の一番難しい時間帯だったかなと思います。

小菊監督の「川崎相手にゴールを守る守備をしてしまうとやられてしまう」という言葉通り分かってはいたはずだけど、ゴールを守る守備を押し付けられているようなそんな時間でした。

守備に粘ったあとの前半28分、奥埜がサイドバック裏のスペースを突いた乾に浮き球のパス。
加藤と山中がそれに連動して上がり、乾→加藤ヒール→山中左サイドを上がっての横パスのような鋭いクロス。
これを中原が拾うとポケットに飛び込んだ乾が冷静に1vs1を決めて2点目を生み出しました。

川崎はさらに前に圧力をかけてきますが36分に乾が縦パスをカット、原川がパスというよりクリアボールみたいな軌道のキックで前に出すと加藤が素晴らしい体の使い方でこれをキープ。
前に張っていた山田へ送ると、山田がワンタッチで谷口をかわして独走。
キーパーとの1vs1を決めて3点リードで前半を折り返しました。

前からの守備で川崎の自由を奪い、押し込んで来たら川崎のストロングポイントである右サイドの裏を突く形で2ゴールにつなげる。
小菊監督としてはプラン通りの前半だったんじゃないでしょうか。

ただ川崎相手に3点のリードが安全圏かというとそうではないし、それは監督も選手もみんな理解していたと思います。
もちろんサポーターも理解していました。

だからこそ気を引き締めて後半に挑むことができたんじゃないかと思います。

川崎の4人の交代も

ハーフタイムの交代で川崎は塚川、小塚、遠野、知念の4人を一気に投入。
これによりセレッソは後手に回り、後半に入ってすぐから川崎のペースで試合が運ぶことになりました。

4人同時交代でセレッソが守備の確認に慌てたこと、まとめて選手を交代したことによってプレースピードが上がったこと、チャナティップと代わって左インサイドハーフに入った遠野が陸とヨニッチの間のスペースを多く突くようになったこと。
こういった理由によって守勢に回ることになりましたが、この一番危険な時間帯を粘ったことで68分に4点目を奪うことができました。

中原がパスミスになったボールを回収。
乾に代わって入ったパトリッキが左サイドで前に運ぶと、パトリッキが原川に見事なスルーパス。

原川は上がってきた山田に折り返して、山田は思いっきり枠に打ち込むとさすがのチョンソンリョンも反応しきれず4点目を奪う。

終盤に守備に疲れが見えてマルシーニョに1点を返されるけど、そこで崩れずに守備を引き締め直してそのまま逃げ切り。
内容、結果共に見事な形で首位川崎を倒しました。

その他

この試合のあと「セレッソが強い」というニュースが流れましたけど、今シーズンの試合を見ている人なら「試合前の分析がハマれば強い。ハマらなかったり修正されると流れを持って行かれる」という印象を持つ人が多いはずです。

「前からのプレスで圧力をかけてビルドアップを封じ、ボールを奪ったら素早くシュートまで持って行く。」

このコンセプトで今シーズンは戦っていますけど、分析が上手く行けばプレスで自由を奪ってセレッソのペースにすることができ、逆に分析が上手くいかないとプレスがズレて裏返されたりゴール前に押し込まれる守備を強いられる。

川崎については離脱者が多く、どういった戦い方で来るかを読みやすかったのは勝利の理由の1つだと思います。
自分たちの準備してきたものが上手く相手に刺さることは快感だろうし、この勝利を次節以降の流れにも持って行って欲しいです。

Q:2トップから始まる守備もうまく機能していたが、今節に向けた狙いがハマった?
「そうですね。前から行くところは変わらずできました。ムツキが何回も追ってくれて、その姿を見て、自分も付いていかないといけないと思うし、後ろも付いてきてくれました。そこで剥がされたら苦しくなりますが、今日はうまくハマったので、守備も攻撃も気持ち良くできました」

https://www.cerezo.jp/matches/2022-04-02/

そしてぼくが個人的に面白いと感じたのが2トップの動き。
山田、加藤共に川崎のセンターバックにプレッシャーを与えながら縦パスのコースを切り、ボールを運ばれた後も加藤は何度も追いかけて川崎の時間を奪う。

そんな風に守備では献身的なのにゴール前ではエゴイストになったかの如くシュートを狙う。
ファーストチョイスがとにかくシュート。
そのギャップが凄く面白いんですよね。

単にエゴイストうんぬんだけではなく、カウンターを喰らわないためにしっかりとシュートで終わろうっていう指示もあると思います。
でもそれ以上に人数の多いFWのポジション争いという中で「自分がゴールを決めて結果を出すんだ」っていう意思表示を感じました。

この試合の山田は川崎から2得点奪ったことでさらに自信がついたと思うし、その他のFW陣も山田を見て負けたくないという気持ちが生まれてるはず。

毎試合代わるFWの組み合わせですけど、こういう争いが良い循環になってゴールという結果にさらに繋がっていけばいいなと思います。
やっぱりゴールシーンは見ていて気持ちいいもんねえ。