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2022.5.21 J1第14節 ガンバ大阪vsセレッソ大阪 試合レビュー

セレッソ大阪vsガンバ大阪の大阪ダービーは今年最多の18,750人の来場者が集まった熱い一戦に。

セレッソはキャプテン清武を起点にしつつ試合の流れを掴んでいたが、パスミスからのショートカウンターで失点を喰らいます。
流れも何もなく得点が入る大阪ダービーらしい展開になるも、後半に入っても冷静に試合をコントロールし続けたセレッソが3点を奪って逆転勝ち。

両者、意地でも負けられない覇気が飛ぶ一戦はセレッソ大阪に軍配が上がりました。

セレッソペースも一つのミスが失点につながる

セレッソは清武をトップ下に置く4-2-3-1の布陣に対し、ガンバは3-4-2-1の布陣。
セレッソはタガートが初先発となり、そのタガートにボールを集めながら攻撃を展開していきます。

前半14分は僅かに届かなかったけどタガートがキーパーとの1vs1のシーンを作り、その後もタガートのシュートチャンスが生まれます。
左ハーフのパトリッキの推進力と右ハーフの毎熊の運動量という、ここ数試合で生まれてきたセレッソのストロングポイントを使いながらガンバゴールに迫ります。

一方でガンバは山見が陸とヨニッチの間のスペースを狙い、レアンドロペレイラがヨニッチと鳥海の間のスペースを狙うような隙間を突く形のランニングを見せてきます。
また、セレッソのビルドアップをひっかけようとするシーンもいくつか見せ、セレッソのビルドアップを封じながら裏を狙おうという意図が見えました。

ただ、このセレッソの守備陣の間のところを使おうとしているのは小菊監督も分かっていたようで「守備のところは、相手の立ち位置として、セレッソのスペースを突いてくることは共有しました。まずは、そのスペースを使わせないと。」と試合後にコメントしています。

事前の分析も上手く行っていたからこそセレッソペースの試合になっていましたが、それでも流れを無視して点が入るところが大阪ダービーの怖いところ。

鳥海、清武と繋いで原川がもう一度鳥海に戻そうとしたところでタッチが浮いてしまってレアンドロペレイラにかっさらわれてしまう。
レアンドロペレイラはそのままサイドを上がり、ファーにいた山見にクロス。
ヘッドで押し込まれてしまいます。

ライン上で止まったか、ラインを割ったかリアルタイムでは絶妙な状態でしたけどVAR判定で山見のゴールが認められます。

流れなど関係なく、一瞬で展開が変わる大阪ダービーの怖さが伝わってきた一失点でした。

だけどこの一失点で意気消沈する様子はなく、ぼくにはセレッソの選手からどこか落ち着きのようなものを感じました。
昔のセレッソだったら一気に流れを持って行かれるところでしたけど、一失点しても最初から準備していたプランを慌てることなく遂行しようとしている風に感じました。

原川が最終ラインに落ちてサイドバックを上げて厚みを作る

小菊監督のハーフタイムコメントがこれ。

  • ボールは握れているのでこのまま続けよう
  • 攻撃時にはバランスを意識すること
  • 焦らずトライし続けよう

13節の名古屋戦では前への意識が強くなってしまって後ろとのバランスが取れず何度もカウンターを喰らいました。
恐らくその反省も込めて攻守のバランスを意識しつつ、なおかつ攻撃面でのイメージ共有によって冷静に崩そうとしたんだと思います。

後半に入ってからは原川が2センターバックの間に落ちて3バックを形成。
左SB山中、右SB陸の位置を高く設定してサイドを押し込んでいきます。

その結果、49分には山中のクロスから陸のボレーという決定機。
山中の位置を高くしつつ左サイドからのチャンスメイクが増えていきます。
ガンバ側は1点リードしていることもあってか受けに回るシーンも多く、セレッソの攻撃チャンスが増えていきました。

そして58分にロングカウンターでついに同点に追いつきます。

ガンバのフリーキックがゴールラインを割ると、間髪を入れずにジンヒョンが陸にパス。
守備陣形が整っていないガンバに対して陸が素早くフリーの清武にパスを入れる。

清武は右を上がっていた毎熊に出すかのように体の向きを右にするけれども、体をひねるようにして左に居た奥埜にスルーパス。
このときガンバの選手が奥埜のマークを外してしまって清武に食いつきに行ってしまったことで、奥埜がフリーでボールを受ける形に。

三浦とGK一森に詰められて奥埜はシュートまで行けなかったけど、こぼれたボールを冷静にタガートがネットを揺らして同点に追いつきました。
タガートのシュートの振りが早い。

奥埜のポジショニングが攻撃に厚みを作る

セレッソとしては後半に入って自分たちのペースを作りながらの同点弾。
そのままセレッソは続けて左サイドを中心に攻撃を続け、66分には勝ち越し点を奪います。

相手のプレッシャーのかからない守備の間にいた清武。
その清武が原川からパスを受けると左サイドを駆け上がっていた山中にスルーパス。

山中のクロスはタガートが潰れ役となって後ろから走り込んできた奥埜の頭に。
そしてヘディングで逆転弾を叩き込みました。

これで2-1。

ここ最近の形として奥埜が高めの位置を取ることが多く「清武トップ下&原川奥埜の2ボランチ」の形から「原川アンカー&清武奥埜2センターハーフ」のような位置を取ることが増えてきました。

奥埜の運動量と戦術眼がなせる業で、ボランチと前線を行き来しながらも攻守に厚みを作ってくれます。
このシーンでも清武にボールが入る前からタガートと毎熊のすぐ後ろ、しかも相手の守備を外しながら高い位置にポジショニングしておき、フリーでヘディングを打つことができました。

セレッソは今まで4-4-2、または4-2-3-1を基準としてきたけれども、この形が相手に分析されてビルドアップを潰されたり、前4枚を捕まえられて攻撃の形を作れないことがありました。

そこで原川アンカー、清武奥埜センターハーフに入る4-3-3の形を流れの中で取り入れることによってビルドアップに変化を作ったり、サイドバックを高い位置に上げたり、清武奥埜が前を向きやすくさせるなどの展開の変化を取り入れています。

後半シュートを0に抑えながら3点目を奪う

その後、鳥海が負傷交代で舩木と交代するアクシデントはありましたがガンバに攻撃の形を作らせずに試合終盤まで流れをつかみます。

為田、北野、加藤と前に素早く仕掛けられる選手を投入。
攻撃でけん制しながら流れをつかんでいきました。

最後はガンバのセットプレーを防いでからのカウンター。
こぼれ球を毎熊が拾ってタックルをかわし、ガンバ守備陣が飛び込みにくい絶妙な間合いでドリブルで運びます。
そして右サイドを駆け上がってきた奥埜にスルーパス。

「最初は時間帯と点差も考えて、前に行かずにサイドでキープしようと思っていたのですが、前に収まった瞬間、スペースが空いていた。ガンバの選手がサイドに食い付いた感じがしたので、中に入って、直接ゴールを狙う動きに切り替えました。そうしたら、マイク(毎熊晟矢)がいいパスをくれました。ファーストタッチがうまくいって、シュートもいいところに飛んだと思います。あの時間帯にしっかり走れたことは、自分のコンディションとしても、いいのかなと思います」

https://www.cerezo.jp/matches/2022-05-21/

これを奥埜がキーパーのニアを抜いてゴールネットを揺らし、試合を決定づける3点目を奪いました。

勝ち点3を奪うためにボールキープという選択ももちろん良い選択だったと思うけど、大阪ダービーという特別な一戦でチームとしての熱気を上げるという意味ではシュートという選択肢はベストだったと思います。

90分を回ってあのランニングを見せた毎熊と奥埜の体力と精神力には賛辞しかない。

試合はこのまま3-1で終了。

セレッソとしては先制点は奪われたものの、準備してきたものをしっかり出しての逆転勝利になったなと思いました。
この試合の内容と結果でサポーターも気持ちが上がったと思いますし、今後の集客にも繋がっていくんじゃないかと思いました。

その他

ガンバ大阪側がこの試合の少し前にトップチーム4人の感染症の陽性判定が出たこともあり、この試合に対する準備というのは難しかったんじゃないかなと感じました。

逆にセレッソについては直前のルヴァン杯でターンオーバーを行い、この試合については西尾が急性へんとう炎で欠場にはなりましたけど一週間かけて準備してきたものを出せた試合なんじゃないかと。

だからと言って勝って当然というゲームにならないのがサッカーであり、大阪ダービー。

小菊監督は試合後に「ガンバも、けが人、コンディション不良の選手が多数いる中で、彼らの思いも背負って戦って欲しい」っていう話をしたことをコメントしていましたが、こういう状況だからこそ気を引き締めて大阪ダービーを戦って欲しいっていう意味に感じ取れました。

それとこの件についても少しだけ。

88分、1点ビハインドの状態。
残り時間を考えると少しでも早くボールを始めたいから味方に早く動いて欲しいという気持ちも分かるし、今この時間に怒りを見せてる場合じゃないだろっていう気持ちも分かる。

ダービーマッチっていうのはタイトルの掛かった大一番やカップ戦の決勝戦ぐらいの独特の緊張感がある試合。
これは決していいシーンではないけれどもその独特の緊張感が生み出したものなのかなとも思いました。

「雨降って地固まる」という言葉があるけれども、次のダービーマッチまでに何か変化が起きてくるかもしれない。

今回の結果でセレッソは勝ち点20の7位に。
4位の広島までは勝ち点1差。
3位のマリノスまでは勝ち点5差。

ACL圏内を目指すとなるとマリノスがいる3位がターゲットとなりますが、5差となりますとリーグも中盤に入ってきて勝ち点を落とせなくなってきました。

奥埜、毎熊の運動量を活かした右サイドの活性化。
原川、清武、奥埜の中盤3枚の流れの中のポジションの変化。
パトリッキの突進力を活かしながら山中のクロスを使う左サイドの展開。
原川がCBの間に落ちて山中、陸を高い位置に上げる横にワイドな展開。

新しい形が徐々に生まれつつありますが、これを活かしながら得点を奪ってさらに上位を目指したいところです。